「10個に切り分けるはずが、いつのまにか8個になっちゃうの」
 オーナーでパテシエの武山さんは、朗らかに笑ってそう話す。
 苺ショート、ガトーショコラ、スフレフロマージュキャフェ、NYチーズケーキ、フルーツのロールケーキ、シュークリームなど。ショーケースに並ぶ約10種類のケーキは、どれも大ぶり。閉店の夕暮れを待たずに連日完売の人気だ。
 取材訪問した日「帰りにアレとコレをお土産に…」と、算段していたのに残念。お店のマーク通り、羽が生えて飛んでいってしまったかのように、午後3時にはケースが空っぽになっていた。
フルーツたっぷりロールケーキ
「つい大きくカットしちゃう…」
1ピース300円
シュークリーム
「気がついたら男性のげんこつサイズになっちゃった…」
…‥180円
ケーキセット…750円
(お好きなケーキと手作りアイス+コーヒー又は紅茶)
 名古屋出身。地元実業団のハンドボール部に所属し、選手で5年、コーチで6年在籍した。次の進路を考えて、ベーカリーでアルバイトをしていた頃に、思いがけない誘いを受けた。
「川湯温泉でレストランを手伝ってくれない?」
 声の主は、目と鼻の先で、ごゆるり処・ぱん・雑貨工房『花*花(ぱなぱな)』を開く、勝島八重子さん。神戸出身の勝島さんもまた、元ハンドボール選手。移り住んでレストランを任されることになったと聞いて、3年間ならという条件で引き受けた。
 はじめての北海道。向かうは道東随一の誉れ高い名湯、川湯温泉。その国道沿いで今も営業するログハウス・レストラン「ちゅっぷ」が目的地だった。
「行ってみたら、ベーカリーはもちろん料理も接客も全部だったの。てんやわんやで瞬く間の3年でした」(武山さん)
 約束を果たしたら名古屋へ戻り、本格的なケーキ修業を再開しようとぼんやり考えていた。ところが、1本の電話でつながった彼女とこの町の縁は、偶然ではなかったらしい。
 川湯温泉駅前でレストラン『オーチャードグラス』(http://www.h7.dion.ne.jp/~kawayu/)を営む武山秀樹さんとの結婚が決まり、帰郷してケーキ屋で修業を積むと今度は、同店で腕を振るうことに。さらに、浜松市・北見市でも勉強を重ねて、平成15年冬、念願のホームメイドケーキ&カフェ店をオープンした。
アソートセット
……850円
(デザート3種と手作りアイス+コーヒー又は紅茶)
デコレーションケーキ(直径18cm)3000円〜
【予約制】
 宣伝らしいことはしたことがない。こんな風に顔を出すのもはじめての事。それでも、口コミでお客さんが着実に増えていったのは、彼女が作るケーキやスイーツのおいしさに他ならない。
 毎朝5時には厨房に入る。10種類のケーキにシュークリーム、プリンを仕込む。
「こだわり?う〜ん、安全な食材を選ぶことには気を遣いますね。道産の小麦と生クリームを使ってます。保存料は使いません。スポンジとロールケーキに使っているのは、標茶町のポロニ養鶏場さんの土つき卵。完全自家配合飼料(出来る限り道産小麦や米糠使用)を食べて、放し飼いされた元気な鶏が生む卵なんですよ」
 ふわっとして口どけがよく、甘さ控えめなスポンジ。見た目も味も品がいい。
 予約制のデコレーション(直径18cm)3000円〜とフルーツたっぷりロールケーキ2500円〜も注文が増えている。お土産やプレゼント用に求める地元客が多いのもまた、おいしさの証し。
素朴なサブレ
(胡桃・胡麻・オートミール入りアメリカンクッキーなど)
…‥250円〜
パウンドケーキ、ブラウニーなど各種
…‥120円〜
 パリの住宅街の路地裏で地元っこが幼い頃から足繁く通う小さなケーキ屋さん。そんな、親近感に溢れるお店だ。でも、そこは、パリ。店内のインテリアは、白を基調に木やタイル、石がアクセントに施され、家具にもアンティークな趣が漂う。実はこの建物は、古い官舎棟の一部。改装は、ご主人と地元の仲間たちが手がけた。
 スィート・ドゥ・バラックとは、フランス語で「長屋」。ご近所さんが気軽に顔を出し、世間話を愉しみながら三時のおやつを買っていく。そんな、パリの日常の一コマがぴったりくる。
「奧の自宅スペースも改装して、いずれは、食事もできるカフェレストランに広げるの今の夢です」(武山さん)
「私なんかでいいんですか?」と、はじめての取材にはにかみながら、にっこりとそう話してくれた。

弟子屈町川湯温泉駅前(駅駐車場脇の看板が目印。30m)
電話015−483−2906
【営業】 午前9時30分〜午後5時 月曜・火曜定休
過去のえぷろんな人はこちら
今月のえぷろんな人へもどる