物置だった自宅2階の10畳間を改装しようと思い立ったのは、1年前。かつて、義父が囲碁サロンにしていた部屋には、小さな玄関と外階段もついていた。
 まずは、畳をはがして外へ運び出す。ホームセンターで購入した18cm幅の板34枚を塗装してはめこむ。歴史ある小学校の廊下みたいなフローリングに仕上げた。石膏ボードの壁は、白く塗った。古い引き戸はお色直ししてステンドグラスをはめ込み、玄関へ。室内の3枚の木戸は、これまた安い板を塗って組み合わせた。すべては、女一人の日曜大工である。
「稼業を手伝いながら2人の男の子でしょ、どこかに出かけてホッとする時間は難しいの。それに、お気に入りのお店を探す時間もなかったからね」と、サバッと笑った。
 早坂ひろみさんは、千葉県出身。長く東京で勤め、CADオペレーターとして原子炉や客船の設計に携わった経験もある。ご主人の故郷、釧路に移住したのは11年前。
「GWだったんだけど、釧路空港に降りたら小雪が舞っていて驚きましたよ」と、目を丸くした。
 この部屋には、名前が付いている。
『used zakka Primo(プリモ)』
こんな念を押した。
「usedは、使い古しじゃなくて、使いっぷるし。錆びつく位の年代物という意味を込めて。primoは、根室の骨董屋で見つけた青い缶からもらいました。この錆びた感じがたまらなく好きなんです」と、角が擦れて塗装のはげたミシンの部品入れを、大事そうに撫でる。
 昔のフランス映画で観たような、屋根裏部屋そのものの空間。壁に飾られたオブジェ達は、どれもユニークでいて懐かしさを漂わせる。
 菓子ケースの支柱には、壊れたアンティークカメラと写真技術を解説した洋書が並べてある。お手製の木製扉に掛かっているのは、骨組みだけのママチャリ用子供椅子。こんな形で素敵に蘇らせることが出来るとは…脱帽のセンスだ。玄関横には、昔むかしの郵便局で見かけた仕訳棚。背もたれの剥がれた椅子に乗せた水切りカゴにいたっては、「不要のカゴを、程良く錆びるまで外で雨ざらしにしておいた」と、ニッコリ。
 たまの休日は、同じく骨董に目がない友人と帯広まで出かけていく。大物狙いで軽トラックを走らせることもしばしば。積み上げられた山の中から、彼女のお眼鏡にかなった古道具は幸せだなぁと思わせるほど、この部屋では、古い物が古いままで魅力を放っている。
 ハンドクラフト歴も長い。ワイヤーに凝って鳥かごを作った。麻糸編みに革や布をあしらったバッグもある。もちろん、この日身につけてくれたエプロンもそう。ダブルガーゼのギャルソンスタイル。上品な藤色にレースのアップリケが美しい。「シミ隠しの苦肉策よ」茶目っ気たっぷりな悪戯少女の顔になった。
 3作目にして「今度は透けなかったから履けそう」と喜ぶフェルトのルームシューズは、もうすぐ出番がやってくる。

 ここは、自分時間を過ごす自分の部屋。だから、一般公開もしていないし、作品の販売もしない。
「気の合う友人とお茶したり、手作りを愉しむ時間を今は大切にしたい」と、話す。
 ただ、地元のクラフト作家さんで興味のある方との交流は拒まない。
 連絡は、下記のアドレスへメールでどうぞ。




Emailアドレス
h12hayas@hb.tb1.jp

(取材を終えて)
 お気に入りのインテリアに包まれて好きな曲を聴く。母でも妻でも何の肩書きもない自分に戻る。時間や場所のせいにしないでやってみよう、と素直に思った。それにしても、また行きたくなる心地いい部屋だ。
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