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1990年、師走。鶴田さんは、オランダの空港から市街地へ向かうバスの車窓に映る光景に目を奪われた。
「着いたのは夜。背の高いアパートが建ち並ぶ大きな団地にさしかかると、数えきれないほどの窓一枚一枚にイルミネーションが輝いていました。図柄も様々で、ただただ感激。それは例えようもなく美しい景色でした」
ご夫妻が冬休み旅行先に選んだヨーロッパは、年の瀬を迎えてクリスマス装飾の真っ只中。20年前の日本ではまだ、絵本や映画の世界に等しかった本場のイルミネーションを目の当たりにした感動を、鶴田さんは昨日のことのようにそう話してくれた。
北見で生まれ育ち、旭川の大学卒業後、ここ別海町で養護教諭生活をスタートさせた。
「独身時代からインテリアに興味があって、家具や雑貨を見て歩くのは大好き。キャンドルや小物をあれこれ飾って、部屋で友人とクリスマスパーティーを開いたりしてましたね」(鶴田さん)
結婚後も室内を飾る楽しみは続いたが、教員住宅で庭はない。8年前、一戸建てに越してまっさきに思ったのは、「クリスマス・イルミネーションができる」という喜びだった。
鶴田家のイルミネーションは、白熱灯の単色使いが特徴的だ。モチーフもシンプルで、全体にシックな印象が濃い。それらは、庭先から生け垣、ウッドテラス、そしてリビングの大きな窓へとつながっていく。
冬支度されたマツの木に取り付けた大きな雪の結晶に始まり、低いイチイを走る細やかな灯りの粒をたどると、テラスに下げた氷柱状の灯りへ。すると、その先のリビングの大きな窓一面が、煌めくスターライトをシンボルにツリーになっている。
窓の足元には、素朴なミニツリーが瞬く。高校で化学を教えるご主人が鉢物用の支柱に電球を組み合わせて手作りしたこの新作が、外と内を優しく結ぶ。
「夫の協力が強い味方です。だって、私が次々に繰り出す希望をうまく配線してくれる技術者ですから」と、鶴田さんは微笑んだ。
リビングの壁に掛けられた古い額が目に止まった。祈りを捧げる少女の背にはかわいい羽が伸びている。
「幼稚園の卒園記念品だから、もう40年も前のものね。カトリック系の園なのでクリスマスの儀式は厳かでした。キャンドルを灯す役目が廻ってこなくて、がっかりした思い出もあります。
毎年12月が来ると、実家の居間の目立つ場所に母が必ず飾っていました。いつのまにか、今度は私がやっぱり、これを掛けたくなるんです」(鶴田さん)
居間のソファに座ってテーブルのキャンドルを灯し、庭を眺めてみた。炎と白熱灯の優しい自然光が気持ちまで優しくしてくれる。
「ここが特等席になるように飾っているの。だから、我が家のイルミネーションは家族仕様なんですよ」と、鶴田さんは照れくさそうに言うが、庭からだって十分に美しい。その証拠に、「今年も楽しみです」と、新聞配達人からお声がかかり、「素敵な景色のご相伴に預かっているから…」と、ご近所さんがステンドグラスのツリーをプレゼントしてくれた。この冬も、みんなが愉しみに待っていたに違いない。
鶴田家のイルミネーションは、本格的な雪が降る頃には片付ける。
それもまた、別の機会に夫妻がドイツで見たという、東方三聖人にちなんだ
ヨーロッパ式の潔さを感じさせる。
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