羊毛クラフト作家 西村和子さん
 春まだ浅い道東4月頃の光景だろうか。
 上空を飛ぶタンチョウ親子と残雪の白が、緑と茶の複雑な濃淡で織りだされた釧路湿原に澄んだ空気を吹き込んでいる。このタペストリーは、第26回阿寒クラフト民工芸展で奨励賞を受賞した西村さんの作品『大地の詩〜釧路湿原北斗』(01年)。
 西村さんが描く釧路湿原は、その季節を問わず、大きな特徴がある。
「写真でよく見られるような蛇行する川がないでしょ。鶴居村に暮らす私には、これが自然なの」と、北斗から見渡す景色を、マイ・湿原と呼ぶ。
 越してきた当初は、寂しげで怖かった北斗展望台も、今では大切な作品のモチーフに変化した。
 昭和49年。結婚を機に生まれ育った東京を離れて鶴居村にやって来た。短大で生活造形を専攻し、織りも学んでいた彼女の目に映った村は、
「暮らしに根ざした羊毛文化が似合いそうな土地だと感じました」。
 昭和63年。村役場の呼びかけで発足した羊毛サークル「鶴の手紡ぎ」に設立当初から参加した。地元の先輩女性たちと一緒に、鶴居ならではの特産品に仕上げようと20年間、試行錯誤を重ねた。



紡ぎ・染め・織りの技術を磨き、趣味の域を越えて街の役に立つ一つの文化に育てようと思った。
「例えば、糸を紡ぐ場合、わざと凸凹をつける方法もあります。そういう糸が生きる作品もありますから。でも、それは均一に紡ぐ技術を身につけてなせる応用なんです。偶然の産物じゃあなくて」
 フキノトウやタンチョウの模様が鮮やかなフェルト製コースターの作り方を解説してもらった。
〈あらかじめ数色のフェルトを作り、羊毛を薄くひろげ、重ねてその上に絵柄のフェルトをのせる。
 ネットを被せ、熱い洗剤液をかけては両手で平らになるようにしっかりと押さえる。〉
 工程は単純だが、重ねているのに真っ平らに仕上げることは、並大抵じゃないだろう。図柄が浮き立つように細い縁どりを加えたことで、難しさが増したのは素人目にもよく分かった。
 同好の士ほど彼女の作品を買い求めていく所以は、このコースター1枚にもよく表れている。

 デザイン画ができると、まずは小さなサイズで織りだしてみる。近郊に自生するヨモギや野花を採集して手染めし、紡いだ優しい色調の糸玉がたくさん並ぶ。糸を選んで織って確かめて。
丹念な作業を続けながら段々とイメージに近づけていく。工房の窓外は緑の庭。清々しい景色が目を癒してくれそうだ。


 青空を背景に羽を広げるタンチョウが、次には湿原が背景に加わり、さらに湿原上空をつがいで飛ぶ姿へ。工夫好きで、オリジナリティを追求する彼女の作品は、とどまらない。
「似たものがすでに存在しないか、いつも気を配ります。工夫の方は適当に。しばらく寝かせて再開なんてケースも多いんですよ」マイペースもまた信条。「最近は、福祉ヘルパーやボランティア活動と平行して、力を抜いて楽しんでいるんです」と、結んだ。
「地元のお土産品にしておきたいから…」というご本人の意思で、
西村さんの作品が購入できる場所は下記の3店に限られている。

 *釧路湿原展望台売店
 *カフェどれみふぁ空(鶴居村)
 *ホテルグリーンパークつるい(鶴居村)

彼女の作品ブランド名は、ひなたぼっこ。
素朴なひらがな文字と手書きの封筒マークがほのぼのとして温かい。
(これらが全てではありません。
お店によって一部置いていない商品もあります。ご了承ください)
*フェルトコースター各945円
*フェルト眼鏡ケース
1680円
*手染めマフラー/コチニール
(11.5×112cm)
3150円
*手染めマフラー/茜
(21×130cm)
6300円
*手染めマフラー/セイタカアワダチ草
(20×133cm)7000円
*手織りマット「湿原物語」/
S1365円・M2100円
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